Infineon のSIC SBDをパワーアンプ終段電源に投入す
2016-05-10


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水晶発振器の電源、DACの電源、パワーアンプ電圧増幅段の電源にはすでにInfineonのSiC SBD が投入されていて、その絶大な効果を確認している。

残っているのは、ラインアンプのヒーター電源とパワーアンプの終段電源である。ここはCREEを使ってきた。当然次のターゲットはこのどちらかになる。水晶発振器のエージンが落ち着いてからにしようかとも思ったが、落ちつくまでまだ時間がかかりそうなので、パワーアンプの終段電源にトライすることにした。

使用するのはIDH16G65C5。
この場合、もっとも気をつけなければならないのはサージ電流である。従来、SiC SBDは一般整流ダイオードに比べて極端にサージ電流に弱く、最悪の場合はダイオードがパンクするということは聞いていた。

K式パワーアンプでは、ROHMのダイオードが指定されていて、サージ電流対策としてRCP(ラッシュ・カレント・プロテクタの略だろう)回路が必須となっているくらいである。なのでこの点については神経質にならざるをえない。

そこでデータシートを確認する。
Infineon IDH16G65C5
If = 16A (Tc < 135℃ D =1)
Ifsm = 124A (Tc = 25℃ tp = 10mS)
If,max = 637A (tc = 25℃ tp = 10uS)
 Ir = 0.2uA (Vr = 600V)

対する ROHM SCS120AG
If = 20A (Tc = 112℃)
Ifsm = 76A (PW = 8.3mS sinusodial Tj = 25℃)
Ifsm = 300A (PW = 10uS square Tj = 25℃)
Ifrm = 66A (Tc=100℃ Tj=150℃ Duty cycle=10%)
 Ir = 4uA (Vr = 600V)

メーカーによって表示方法が異なるので一概には比較が難しいが、IDH16G65C5のIfsmは注目に値する。tp = 10ms ということは、50Hzの正弦波で言えば1/2サイクルに相当する。この条件をクリアできればそのまま置き換えが可能といいことになる。

早速シミュレーションしてみる。
電源電圧は35Vrms、  電源トランス二次側の巻線抵抗は実測で1.5Ω、 平滑コンデンサの容量は22000uF、 負荷電流は1.6A。この条件でリップル電流を計算すると、正弦波一発目のピーク電流は33Aとなった。ディレーティングを考慮に入れても、十分にクリアできる。

いっぽう、SCS120AGの場合、PW = 8.3msという条件下でIfsm = 76Aである。PW = 10mSであれば、もっと許容量は小さくなるはずなので、そうなると余裕はほとんどなくなるり、ラッシュカレント対策は必須となる。

そしてなによりもInfineonが優れているのは漏れ電流の少なさにある。ROHMに比べて1/20。圧倒的な差である。音に影響がないはずはない。


次に実装方法の説明。
ダイオードは発熱する。長期安定性を考えたら放熱対策をしておくべきだろう。

そしてもう一つの懸案。これはMOS-FETで実際に経験したのだが、これらのパワーデバイスは必ず振動すると言っていい。

以前、ファンクションジェネレータで信号を入れてパワーアンプの測定をしていた時のことである。スピーカーを接続していないのに、アンプから音がするではないか。それもジェネレータの周波数に合わせて振動数が変化する。どこから音がするのかと調べたら、MOS-FETだった。こんなに簡単に振動するのかと驚いた。ならば当然整流ダイオードも盛大に振動しているはずである。

Nelson Passのパワーアンプの実装方法を観察ていると、MOS-FETを
大型の平ワッシャをはさんで固定している。我がTaylor Power Ampもこれを真似させていただき、すでにこの方法で実装している。

整流ダイオードはどうしたか。L型アングルを使って8個のダイオードを挟み込むようにして固定した(写真参照)。これで放熱対策も十分である。

なお写真に写っている8個の黒い物体はファインメット・ビーズである。

音はどうなったか。
まだ昨日(5月9日)に交換したばかりなので、いつものように高い周波数域に極端に偏った音で、どうにも聞いてられない。こればかりは24時間通電は気がひけるので、気長にエージングの完了を待つしかないだろう。
[Audio]

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