ボルテージ・ミラー型シリーズレギュレータ(4) 失敗編
2016-01-22


禺画像]
---2016年1月25日追記---
この記事の途中にも追記で書いたが、ここで提案されているレギュレータは発振しやすいため、実用にはならないことが判明した。
誰も作る人はいないとは思うが、以下の記述には誤りがあることを留意されたい。

(ここまで)
---

DDC(I2SOverUSB)のUSB側の電源に新しいタイプのレギュレータを採用したことは報告の通り。その後常時通電状態にしているが、まったく問題なく作動している。

そんななか、妻からオルガンの音が良くないのでなんとかして欲しいとの依頼が来ていた。トランンペット系の音を出そうとするとギスギスして耳にひっかかるというのだ。そのためオルガンを弾く意欲が随分と削がれてしまい、練習に身が入らないと訴える。

妻のオルガンシスムテムのDACにはほぼオリジナルに近いSalas Reflektorが3台搭載されている。いままでの経験から、おそらくこれが原因であろうとあたりがつく。

現在、こちらのメインシスムテで使っている新型のReflektor(これを勝手にAdvancedと呼んでいる)をそのまま妻のDACに載せることも考えたが、回路が大規模になってしまっているので、音は良くなることはわかっていても躊躇する。

ならば、いっそのことボルテージ・ミラー型のシリーズレギュレータにしたらどうか。それが今回のミッションである。

どうせやるなら、音が良くならなければ意味がない。
何しろ妻の耳は容赦がない。私のような下手な思い入れなどないから、問題があれば1秒でずばりと指摘する。そんな相手先に、私のシステムで評価せずにいきなりの投入である。新しいシリーズレギュレータが妻の耳に受け入れられるかどうか、正直言うと少しばかり緊張した。

まずは事前に何度もシミュレーションをかけて問題点をつぶす。だいだい回路が固まってくるとパイロット基板を作ってさらに問題をあぶり出す。

そうやってできたのが掲載の回路。グラフは、周波数を横軸に取った出力インピーダンス特性である。一見して、普通のレギュレータの特性でないことがわかるだろう。

理由がある。当初考えていたレギュレータは次の欄で紹介するとして、まずはQ4のベースの電位設定に着目されたい。

Q4は、定電流回路を構成するJ2のD-S間電圧を安定させる役割がある。
その電圧の基準電圧は101点である。ここが「みそ」である。

J2にかかる電圧はなるべく変動を受けない方が良いのだから、そのことを優先するなら基準電圧はOUTからとるべきである。最初はそう考えた。しかし「臍曲がり」な性分なのか、それでは満足できない。そこで101点からとることを考えた。

その効果は何か。
仮に負荷電流が増大したとしよう。これにともない、M1のG-S間電圧が増大する。式で表すと次のようになる
    V(101)=V(OUT)+V(M1:G-S)

その効果はJ2のD-S間電圧が増大するので出力電流も増大させる方向に働き、Q2のベース電圧を高くする方向に作用する。その結果、出力電圧が高くなる。


つまり、この回路は負荷電流が増大すると出力電圧が高くなるという負性抵抗の性質を持つ。もちろん、その効果は非常に小さいので、発振などの悪い影響を与えることはない。

---2016年1月25日追記---
「発振しない」と書いたが、実機で稼働させたところ、発振することが判明した。記事を削除すればよいのだろうが、失敗したこともそのまま残しておくことにする。
(ここまで)
---


この効果によってどんな音になるのか。それは聞いてみなければわからない。もしかして従来型が良いかもしれない。もしそうなっても、負性抵抗型レギュレータには意味がなかったという実験結果が得られるのであれば、それも人類のための貢献だろう(おおげさ)。

一般に増幅回路の電源電圧は一定であることが理想とされている。しかし現実は、負荷電流が増大すると電源電圧が低下するので、増幅回路には抑圧的(コンプレッサー)な作用をもたらすだろう。



続きを読む

[Audio]
[Schematics]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット